ピッケルハウベの保存

   序論見えない死の光線紫外線の防御湿度についてカビ対策について温度サビ正しい手入れ方法

   第6章 
   正しい手入れ方法


    はじめに

掃除をはじめる前に・・・
ちょっと待った!!!
そのやり方で本当に大丈夫?
この章では長い間手入れをされることのなかったヘルメットにどのような基本的手入れを行こなう
べきかをご覧いただきます。
まずアンティークなものの手入れ方法についての情報には、比較的良いとされている方法と同じ
くらい多くの役に立たない情報を含む非常に「グレ-」な領域だということを知っておいて下さい。
従って、専門家(あなた自身を含む)の言葉(思い込み)を鵜呑みにするのではなく、最終的には
コレクタ-自身の責任において自分で研究した経験をベ-スに、正しい手入れの方法を探り当て
ていくものなのです。

コレクションの分野によっては、特にメダルや勲章のように暗黙の知識として時間の経過によって
生まれる色彩つまり緑青(青サビによる艶)のように残しておくべきものがあります。
ただし、ピッケルハウベの様なアンティ-クヘルメットにおいては、汚れて輝きを失っているものを
そのままにしておくことが必ずしも良いことではないので、ル-ルに従って見栄えの良い状態を保
つための定期的な手入れを怠ってはいけません。

コレクションを手入れするという事には、2つの意味があり、 この章では、何年もの間手入れをされる
ことのなかったヘルメットのホコリや汚れを取り除き、本来の輝きを取り戻す為の掃除が目的であり、
部品の交換、再ステッチ、および他の構造的な修繕を目的とする修復が目的ではありません。従って
修復についてはここでは言及せず、この項目をご覧になった経験と共に各個人の判断に任せることが
最良だと考えます。 みなさんは、修復によってもたらされるダメ-ジとヘルメットを掃除する事によって
得られる成果を良く比べてみて下さい。掃除の努力をする前に修復しようとすることには賛成できませ
ん。どんな掃除にもなんらかの破損の危険を伴います。 もしこれを読んで頂いた方が、ご自分のコレク
ションの手入れに満足な結果が得られない時には、専門家に相談するか、無理をせず方法が見つかる
まで手入れしたいと思う部分に手を加えない事も必要なのです。


   1項 手入れ前準備

ここで採り上げるタイプ1871モデル:ウュルテンベルク擲弾兵119連隊一般兵用
ヘルメットを今回のクリ-ニングの対象とします。非常に良い状態でしっかりし
ていたにもかかわらず、とても長い間不十分な展示方法で飾られいたものです。
革のヘルメット表面は汚れて、前部のプレ-トはひどく輝きを失っている上革の
ライナーは乾燥してもろくなっています。
しかし、このヘルメットを例えるなら本質的には、「磨けば光る宝石の原石」です。                                      

【用意するもの】
1.綿の手袋もしくは園芸、医療用ゴム手袋
2.汚れのない柔らかい布・セ-ム皮
3.歯ブラシ、靴磨き用ブラシ
4.中性石鹸(洗剤不可)
5.靴クリ-ム(黒色&無色)
6.研磨材を含まない金属みがき用クリ-ム
7.掃除機   



   2項 観察
手入れを始める前に、ヘルメット自体が手入れをしても大丈夫な状態かを先ず見極めます。このヘルメット場合、割としっかりした状態で非常に良い形を保っているように見受けられ、 掃除に十分耐えうる状態であることを確認しましたので、次にヘルメットに取り付けられている部品のうち簡単に外せるものを取り外します。 外せる部品とは、ナット、ネジ、または革のくさびでヘルメット本体に取り付けられている全ての部品を含んでいます。金属のツメを曲げて取り付けてある部品は取り外さないでください。 90年以上そのままの状態に保たれてきた薄い金属のツメは簡単に折れてしまいます。 本体掃除をしやすくするために注意して前部のプレートを取り外すだけで十分だと思います。
右の写真は、真鍮ナットでヘルメット前部に固定されたプレートを取り外した姿です。 ヘルメットの内側に取り付けてある真鍮製のナットを外す為に、ヘルメット内側の養生を行ってからネジの潤滑剤を革製のシェルの内側に溢さないよう慎重にナットに数滴付けてそっとしておきます。 丸一日(24時間)経った頃に、慎重にナットを緩めてプレートを取り外しました。
このヘルメットをより大きな写真で見る為にはココをクリックして下さい。
   3項 金属部分の掃除
この写真では、洋銀加工されたピッケル(ツノ)の部分の輝きを失ってしまっているのがご覧いただけると思います。 ピッケルの台座は、割り釘がヘルメットをほぼ垂直に貫通してピッケルに対してほぼ直角に曲げられて革のシェルに固定されています。 そのためピッケルの台座を取り外すことはしません。
金属製の部品は、始めに柔らかく丸めた綿布に最も刺激の少ない石油溶剤などを染み込ませて、少しずつ汚れを拭き取るように磨いてください。

この段階ではできるだけ、洋銀メッキされた真鍮の部品の掃除に関して、磨き粉(剤)ではなくセ-ム皮を使って土と汚れを取り除くまでの作業で止めておきます。

メッキの施された部品が酸化等の理由で非常に汚れている場合は、非研摩材タイプの金属用つやだし剤で磨きます。 研磨材には液体タイプのものも多くありますが、私はできるだけ研磨材の含まないゲル状のものを使用しています。液体タイプも使用することができますが、ヘルメットの大部分が皮で構成されていることもあり、一度研磨剤を皮や皮と金属の接触部に染み込ませると取り除くのが難しいということがあるからです。私は液体タイプを一度も使用したことがありませんが、綿布を丸めて磨くことによって、良質のつや出しは最も効率的です。 慎重に磨けば、くすみが取り除かれて、元の洋銀メッキの輝きを取り戻すでしょう。 そして最後に、柔らかくて、きれいなセ-ム皮で拭き仕上げます。
   4項 金属部分掃除の注意
注意1: ヘルメットの付属部品で特に前部ヘルメットプレートを過度に磨かないでください。確実な最も低いレベルでの手入れを施すことで付属部品をきれいにすることが最終目的です。 徹底的に磨き上げることは、その他の点で完全な形で残っていた付属部品を破損させることにつながってきます。

注意2: この方法が将校用のヘルメットや個人的にオ-ダメイドされたヘルメットのように金メッキや洋銀加工された付属品のために行われることは決してお勧めいたしません。 金属のつや出し材を使用することは、金箔を削り取って、下地の金属まで輝きを失わせてしまうため、 磨く前より最初のうちは輝いて見えるかもしれませんが、時間が経つにつれ最後には修復不可能なダメ-ジを与えたことに気づかされます。

金メッキや銀加工の施された部品に関しては、ヘルメット本体から外せるのであれば、非常に柔らかい歯ブラシに暖かい石鹸水を付けてそっと汚れた部分を掃除してください。そのあとヘア・ドライヤ-で完全に乾かしておけば一般的には、これでほとんどの埃と汚れを取り除く事ができます。
部品をきれいにする前に、付属部品に金メッキや銀加工がされていないかをよく確認してください。 金属研磨材は、真鍮かニッケル加工された付属品にのみ使用してください。
   5項 ヘルメット本体の掃除
ヘルメットの外部と内部は、表面を傷つけないように吸い込み口の先に柔らかいブラシが付いたアタッチメントを付けて掃除機をかけます。 この簡単な方法によって、ヘルメットの内装ライナーの中に長い間かけて蓄積されてきた土埃や虫の死骸を取り除く事ができます。それから、やわらかい布に中性石鹸の液体を染み込ませてから固く絞ったもので、表面をやさしく拭きます。 この作業によって、ヘルメットの表面に長い間かけて溜まった汚れのほとんどが取り除かれます。 革の表面を掃除する際にガラスクリーナー洗剤は使用しないほうがいいでしょう。 ヘルメットのラッカ-仕上げされた表面(外表側)や内(内装)側の皮のためには、市販の中性石鹸(洗剤ではない)をお湯に溶かしたものや食器洗い用石鹸をお勧めします。
これで長年溜まった汚れと埃は、ほとんど取り除かれました。 掃除の後に時々やわらかな布でヘルメットの繊細な表面を軽く拭いておくだけで再び元の艶を取り戻します。 掃除用の布はやわらかい綿のものを使用し、掃除中に汚れが目立ってきたら、せっかく綺麗になった所をまた汚さないように未だ汚れていない所を使って拭くように心がけましょう。
   6項 シェル磨き。
今回用意したヘルメットは、以前は太陽の光にさらされていたため、表面塗装がかなり色あせてしまっています。
右の写真は、良質の靴墨を歯ブラシを使って薄く塗布した後靴みがき用のやわらかいブラシで磨いているところです。
古くなった皮革に光沢剤を含んだ靴墨を使用することには、幾つかの異見があります。 「ルネッサンスワックス」と呼ばれる製品や、溶剤を含んでいない蜜蝋ベースのつや出しなら問題ないと言う人達も居るようですが、ここではあくまでも革製ヘルメットのラッカ-塗装された表面の軽い艶出しが目的なので、良質の靴墨を少量使用しても全く問題はありません。

最終的には、柔らかくてきれいな布で軽く磨いておきます。
   7項 掃除の成果
慎重に元通りにされたヘルメットは、ご覧のように輝きを取り戻しています。 黒ずんだヘルメットプレ-トは、適切なクリーニングを行った事でジャ-マンシルバ-の輝きを取り戻しています。時代と共に汚れて埃だらけになっていた革のヘルメットは、今や美しく鮮やかに光り輝いています。手入れの“前/後"を見るにはココをクリックしてください。
   8項 サビの処理方法
金属シェルで作られたヘルメットに関しては、サビが表面にいったん定着すると革製のヘルメットの銀と真鍮の部品と同様に取り除くことは非常に難しいです。

軽い活性さびに関しては、潤滑剤として良いGUNオイルを付けた目の細かいスチールウールを使えば、簡単に取り除くことができます。 ただし、十分に気をつけてください。これはサビだけが取り除かれているのではなく、金属面をも傷つけていることになります。 もしサビが金属自体に穴を空けてしまっているようなら、サビ止め剤か良質のGUNオイルを軽く塗って金属の酸化の進行を止めるくらいのことしかできません。

強力な石油系サビ取り剤を使用した場合、サビ取り剤が金属とサビの間に染み込んでいって対象物(ヘルメット)を完全に破壊することになるかもしれません。 どんなサビ取り剤でも簡単に表面のサビを取り去ってくれますが、銀か真鍮の部品では、それは、緑青を取り除いて、ヘルメットの外観までも変えてしまうでしょう。 一般兵用のヘルメットに付属するすべての金属部品の輝きを無くしたいのであれば、使用しても良いと思います。 しかし、この方法は将校用のヘルメットの金メッキ部品については絶対に推奨できません。
   
不活発サビは金属との結び付きや活動の性質上、研摩で取り除くこと以外選択の余地がありません。 サビ止め剤か良質のGUNオイルの塗布が最も本体を傷めない方法です。

活性さびに対しては、その領域に多めの石油系クリーナー兼潤滑サビ予防剤かGUNオイルを塗っておきましょう。 スチールウールでサビを擦り取ろうとする前に、一晩クリ-ナやオイルに浸しておくことよいでしょう。サビの進みぐあいによって擦る力を調整しながら、スチールウールを円を描くように動かしていきます。 あくまでも金属そのものではなく、サビだけを擦り取ることができるくらいの力で行うことです。 作業中スチ-ルウ-ルを持つ指にサビを取り除いた瞬間にザラザラした感じから、より滑らかになったように感じられたらサビが取り除かれているはずです。 短い時間で必要最小限の範囲を磨いてください。それから、その擦り取った範囲をやわらかい布で拭いてきれいにしてください。 進捗状況を確認しながら、必要に応じてその作業を繰り返してください。 さらに付け加えると、必ず潤滑剤としてCLPかGUNオイルを使用すること、そして決して新たなダメ-ジを与えないよう慎重に磨こうとしている部分を確認することを忘れないでください。
スチールウールを使用する場合には、作業中ダメ-ジを受けやすい銀、真鍮、塗装されたヘルメットの付属品との接触を極力避ける事に細心の注意を払って行いましょう。
        結論
最後にアンティークヘルメットの保存と掃除についてのケア、注意、および基本的なスキル等を、心に留めていただくことで、過去の時代の貴重なアイテムを少しでも多く後世のために適切な方法で残せる本物のコレクタ-が、日本でも増えていただけたら幸いです。

興味を持ってこのペ-ジをご覧頂いた方のために、質問やコメントをメ-ルで受け付けております。コレクタ-の皆様の実体験に基づく保存、手入れに関する失敗談や有益なアドバイスがあれば当方といたしましても大歓迎いたしますので、お気軽にご相談下さい。

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