ピッケルハウベ(Pickelhaube)とは

【語源】

ピッケルハウベは、ドイツ語のPickel=「ポイント」「つるはし」とHaube=「ボンネット」を語源としており、Haubeは
ヘルメットなどのかぶり物の一般用語として使われていました。19世紀にプロイセン王国の軍隊で採用されたツノ
付きヘルメットの事を指し、頭頂部に付けられたツノは、騎兵によるサーベルの打撃に対して歩兵を保護する特徴
であったと言われています。

【構造

基本的な構成材料としては、ヘルメット本体が革や金属(戦時中には革の不足によりフェルト)を使ったものがあり、
革製のものには艶のあるラッカー塗装が施され、金属製のものはニッケル合金が使われていました。
さらにツノ以外に特徴的な部分としてヘルメット前面に金属をプレス加工し金や銀メッキ処理を行なった国家紋章
が取り付けられており、ドイツ帝国に属する国ごとに異なった紋章が存在します。また、内装には革製やシルク製
のライナ−が存在し、特にシルクを使ったものは、将校以上の階級で使用されていた現在のイージーオーダー品
に相当するものであり、それ以外の階級兵士や金属製ヘルメットには、コストや強度の都合で主に革のライナー
が採用されています。金属製のヘルメットは、主に胸甲騎兵によって使用されましたが、ドイツ宰相であったビスマ
ルクや皇帝ヴィルヘルム2世が被っている肖像画を歴史教科書などでも目にすることがあります。

【歴史】

ピッケルハウベは、1842年にプロイセン王国のフリードリッヒ・ヴィルヘルム四世によって設計された後、その独特の形
状は他のドイツ諸国へ次第に広がってゆき1887年にバイエルン王国が採用したのを最後に、ドイツ全土の陸軍で一般
化しました。同時代頃にドイツ以外の幾つかの国でもピッケルハウベと同様なツノを有するヘルメットを採用しています。

1914年に第一次世界大戦が始まるとそれまでの戦場とは様相が一変し、大戦初期にこそ革製のヘルメットを着用した
兵士達が戦場で戦う光景が見受けられましたが、塹壕戦において砲弾破片や弾丸による頭部負傷が多発し革製のヘル
メットが兵士達にとって役に立たないことが明らかになったため、1916年頃からその後第二次世界大戦に至るまで使用
されるドイツ軍の象徴とも言えるスチールヘルメットに変更されていきます。ピッケルハウベは、その後ごく僅かな儀礼的
用途に用いられるだけとなり1918年のドイツ帝国の崩壊によって、生産されなくなりました。ピッケルハウベが今日ドイツ
やドイツ人の過去の悪いイメージとしての象徴的な部分としてあり続けているのは、特にイギリスにおいてプロパガンダ活
動での大々的な活用によるものと考えられます。

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